今回採択された『Lasermice bicolor + conference』(仮)は、菅野創さんによる群ロボットインスタレーション作品『Lasermice』のアップデート版の制作・発表と同時に、編集者でキュレーターの塚田有那さんとともにカンファレンス、ワークショップ、ライブイベントの開催を目指しています。新作のリサーチ対象である「社会の二極化と分断」「生命の友愛的アルゴリズム」などをテーマに多角的なプログラムを発信することで、アート作品における社会発信の可能性を広く探る試みです。

アドバイザー: しりあがり寿(マンガ家/神戸芸術工科大学教授)/
戸村朝子(ソニー株式会社 コーポレートテクノロジー戦略部門 テクノロジーアライアンス部 コンテンツ開発課 統括課長)

コラボレーションによる音づくり

—中間面談はビデオチャットを用いて行いました。

塚田有那(以下、塚田):イベントの概要が固まってきたのでご報告します。3月14日、15日の2日間、神宮前の「CASE B」という会場をおさえました。2階建ての倉庫のようなハコで、1階部分は日中インスタレーション展示をし、その空間で14日の夜はライブを行います。2階はフリースペース兼トーク会場として企画を詰めています。
ライブのゲストアーティストはおふたりにお声掛けしていて、ひとりは、北海道を拠点にするサウンドデザイナー/プロデューサー/DJのKuniyuki Takahashi氏です。「MUTEK」にも出演されていて、今回のロボットとの共演に興味を持ってくれています。もうお一方は、OOIOO(オー・オー・アイ・オー・オー)というバンドのパーカッショニストのOLAibi(オライビ)氏です。電気を通さない、アンプラグドな打楽器奏者です。打楽器とマウスの対決のようなことがしたいと声をかけたら、彼女も興味を持ってくれました。加えて、マイクで拾った音で音づくりをしている方に音響をお願いしています。その方と、ステージをつくってくれる方とで現場の下見に行ってもらい、どのような音づくりができるか、相談を進めています。トークについては、具体的なゲストなどはまだ検討中です。

菅野創(以下、菅野):僕からは作品制作の進行状況についてご報告します。プロトタイプを5台つくり、それらがちゃんと動いたので、昨日、120台分の材料を中国の工場に発注しました。

戸村朝子(以下、戸村):音はどんな感じですか?

ー菅野さんが、手元にあるプロトタイプを動かして音を出してみます。

菅野:タンバリンのジングルという金属パーツの部分と、スマートフォンのバイブレーターのようなものを組み合わせることで音が鳴る仕組みをつくっています。設計はほぼ完成したので、あとはとにかくつくるのみです。

戸村:マウスが楽器としてどう面白くなるかは、当日、出たとこ勝負になるのでしょうか?菅野:出たとこ勝負なところもあるのですが、これまでのバージョンを展覧会で見せてきた経験から、ある程度想像がつくところもあります。テーブルの上ではあまり音が響かないのですが、いわゆるタップダンスをするようなフロアを会場では組もうと考えています。加えて、先ほどお話しした音響の方に、いろいろな種類のマイクで音を拾ってもらおうという話になっています。なので、音づくりは結構うまくいく気がしています。

ゲストと観客、マウスの三者でのインタラクション

菅野:いわゆるパーカッションやインプロヴィゼーション(即興演奏)というものを改めて調べたなかで、ガーナなど西アフリカの、ミニマルで抑揚の少ない、繰り返しの要素が強い音楽がイメージに近いと思いました。例えば5人組のセッションにマスターがいて、マスターは完全にインプロヴィゼーション、ほかの4人はそれに合わせて変化していくといったものです。あとはバリ島のガムランが持つルールにも共感できる気がしたので、そういう方向性かなと思っています。OLAibiさんはアフリカ系のパーカッションなので、結構おもしろい感じでみせられるのではと考えています。
もうひとつ、これまではステージを単一の木材でつくっていたのですが、今回は金属を部分的に入れることで音色を増やしてみようと考えています。その部分へのアクセス制限をするのもおもしろいかもしれません。Kuniyuki Takahashiさんとのセッションでは、テクニカルなことをいろいろと試してみようと思っています。例えば、マウス等をストロボで照らすことで全部一発で同期できるような仕掛けにすれば、全体の演出も可能です。同じロボットながら、系統の違うふたりのミュージシャンそれぞれの色を出して、違うことができたらと考えています。

しりあがり寿(以下、しりあがり):ひとつのセッションは何分くらいでしょうか。はじまったら、ゲストとマウスにお任せというかたちになるのでしょうか。

菅野:ひとつのセッションは20〜30分を考えています。時間帯でパラメータを変える程度の想定はしているのですが、実際に現場でマウスを動かしてみないとわからない部分も大きいので、イベント当日の日中はインスタレーション兼ゲストの方との公開リハーサルにしようと思っています。ゲストも地方を拠点にしている方々で、事前の打ち合わせが難しいのですが、彼らとしても実物が目前に広がった状況から沸くインスピレーションがあると思うので、ライブ直前にできる限り試行錯誤の時間を設けます。来場者の方々がそれを見るのもおもしろいと思います。

戸村:おっしゃるように、ゲストのムードに合わせてマウスの反応をガラッと変え、多様性を見せるのもおもしろいですし、かつ、変わらない一貫性もどこかに持たせておくのもありだなと思いました。狙いやメッセージ性は、できたものに後付けもできますし。

菅野:できたものの印象を大事にするということですね。確かにそうです。狙ったところで、結局どちらとも合致しない場合もありますし、どうなるかわからないからこその楽しみがあります。

塚田:ゲストには、マウスも同じ演者として、対等な関係でセッションしてほしいと話しています。マウスを、人間がコントロール可能なものではなく、人工生命を宿して勝手に動くロボットの群れとして扱い、そこに人間がどうセッションしていくか。それが今回の一番おもしろいところだと思っています。
ただ、ゲストからマウスに何か仕掛けられる仕組みがあると、セッションしたり、ブレイクを入れたりと、ストーリー構成がしやすくなるので、ゲストはストロボの案をおもしろがってくれています。なおかつ、それが音ではなく光でできるというのがいい、とおっしゃっていました。

菅野:実は、機能は決めなかったのですが、マウスにマイクもつけました。音の高低や方向性まで聞き分けられるほど高機能なボードコンピューター(以下、ボード)ではないのですが、あればなにかしらできるかなと思い。

戸村:耳がついて、ゲストと観客、マウスの三者でのインタラクションも可能になりますね。音のコントロールは結構難しいので、ボードの性能は高くしておくに越したことはないと思います。観客からのインタラクションという観点では、先ほどのストロボを、観客が持つサーチライトにしてもおもしろいかもしれません。

菅野:サーチライトはとてもいいですね。展示でも使えそうなアイデアです。

最終面談と成果発表に向けて

しりあがり:余談になりますが、僕もノイズバンドみたいなものをやっています。毎回リハーサルなしで、必ず自由にやるという約束なのですが、メンバーと楽器が同じだと結局似たような感じになっちゃうんです。案外、数が揃うと変化が出にくかったりしますよね。その集団の癖のようなものを早くつかむことで、どこでどう刺激を与えるといい変化が生まれるかを考えられるのではないでしょうか。ゲストの方々には事前に映像などでマウスの様子を共有できたりしますか。

菅野:制作を最速で行ったとしても、全部を動かせるのは2月になります。年末に、手元の5台のプロトタイプを使ってプログラムを試そうと思っているので、とりいそぎ、その映像であれば共有は可能ですね。

戸村:最終面談が1月下旬から2月中旬を予定していますが、その時には全景が見られるでしょうか。

菅野:そうですね。お見せできると思います。

塚田:トークイベントのテーマなども、次の面談までには固められると思います。

戸村:あとはどんどん進めるだけですね。

菅野:僕たちのイベントが成果発表とバッティングしてしまいましたが、このイベントを成果発表としてもらいたいと思います。実際のインスタレーションやライブ、トークイベントまであるので。アドバイザーのふたりもぜひお越しいただきたいと思います。

—最終面談では、トークイベントのテーマやプロトタイプの映像を報告する予定です。