メーカーで技術戦略のためのリサーチやコンテンツ開発をする傍ら、個人活動として「テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみ」を軸に作品制作している大西拓人さん。文化庁メディア芸術祭では、作品『Contact』が第21回アート部門で審査委員会推薦作品に選出されています。本企画『ドローンが来ると、風が吹く』(仮)では、ドローンが飛び立つ際に風を起こす特性を用いた作品群を制作します。

アドバイザー:磯部洋子(クリエイター/sPods Inc CEO/Spirete株式会社COO/Mistletoe株式会社プロデューサー)/タナカカツキ(マンガ家/京都精華大学デザイン学部客員教授)

作品としてどう表現するかを考える

大西拓人(以下、大西):今回のプロジェクトでは「テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみを考えること」を突き詰めたいと思っています。企画書の時点ではシリーズ作品を制作する予定でしたが、少し方向性を変え、作品づくりよりも場づくりを重視したいと今は考えています。アウトプットとしては、ドローンを使ったひとつの作品にまとめ、グループ展を行い、ほかの作家との対話を行いながら論理化し、それを自分のメディアで発信していく方法を考えています。「テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみを考える」という軸は、企画書をつくるなかで出てきた言葉なのですが、自分のこれまでの考えを言語化することができたので、その点だけでも大きな気付きになっています。
 
タナカカツキ(以下、タナカ):「作品としてどう表現するか」が抜け落ちているかもしれません。ぜひ、投げかけだけに終わらないようにしてほしいです。大西さんのなかで「テクノロジーのおかしみとはこういうことなんだ!」と明確にした上でなら、個展とグループ展のどちらへも展開できると思いますし、場づくりへと広げていけるのではないでしょうか。
 
磯部洋子(以下、磯部):大西さんの中で言語化されたテーマをもとに、魅力のある問いが提示できるといいと思います。テクノロジーのおかしみに気付くことには私も共感します。もう一歩踏み込んだ表現が望まれます。
 
大西:そうですね。表現から逃げている意識はありませんでしたが、論理化をすることで結果的に逃げになってしまったのかもしれません。
 
タナカ:研究テーマ自体は興味深いので、ほかにもいろいろと切り口を考えてみてはいかがでしょうか。ドローンには、ものを運んだり写真を撮ったりする機能があることは皆さん知っているので、鑑賞者はドローンが一体何をしているのか、という視点で見てしまいます。表現として落とし込むためには、作品に込める情報をもっと削っていくべきだと思います。

テクノロジーのおかしみの見つけ方

タナカ:ドローンのおかしみは、確かにあると僕も思います。以前、テクノロジーをぞんざいに扱うことへの興味で、飛んでいるドローンをトングで捕まえてみたことがあります(笑)。大西さんもいろいろ試していますが、もっとほかの切り口も考えられるのではないでしょうか。
 
大西:思い返すと、最初に試したのは、風船をドローンで割ってみるということでした。その際、ドローンがプルプルと震えるのを見て「かわいい」「かわいそう」といった感情が芽生えました。本来の意図と外れた、人々が着目していない現象に魅力が潜んでいたような気がします。
 
磯部:小さな心の動きをきっかけにして、作品をつくっていくのもよさそうですね。飛び立つ際に風が吹いたり、飛行中に震えたりすることは、ドローンの機能というよりは必然的に起きてしまうことですが、実はそこに人の心を動かすものがあり、そこから表現が生まれることが提示できるかもしれません。
 
大西:ドローンが起こす風に関する言及はあまりみたことがないので、もう少し突き詰めて考えたいと思っています。
 
タナカ:もしかしたら産業界のドローン達にとって、機能的でありたい、音もなく飛んでいく姿こそがかっこいい、という価値観があるのかもしれません。
 
大西:インフラになったり、当たり前になったりして、ドローンの存在自体が次第に人々から意識されなくなるような状態を目指しているのかなと思います。芸術作品でもドローンを使っている事例はありますが、光を浮かべたりロボットの代わりにしたりしているものが多いです。
 
磯部:基本的には空間演出のためという意識で、本来の機能で使っていますね。

作品の方向性を見据えて

タナカ:今回のプロジェクトで考えるべきは、ドローンが「そこはいじらないでくれ」と思うような、不本意なところを突いていくことが肝になるかもしれません。
 
磯部:ドローンに備わる個性の中で、本来は必要ないと思われているものの、実はおもしろみがあるなど、そういうものを提示し続けることが作品の軸になるでしょうか。鑑賞者の心を何によって動かすのかが、作品の細部からにじみ出てくるとよさそうです。
 
大西:問い続けることで、自分の中でひとつの「型」が出てくることも期待しています。個性やおかしみといったことを、どう見つけて伸ばしていくか、試行していきたいです。これまでの仕事を振り返ってみると、プログラミングが好きだから作ってきたというよりも、テクノロジーを用いて、見た人が「そういう使い方があったのね」と思うようなことを提示したいという気持ちがずっとありました。過去には、スマートフォンアプリの画像翻訳機能のエラーを用いて作品化したことがあります。その後、そのアプリのバージョンアップによってエラーが出なくなってしまいましたが。ドローンに関しても、テクノロジーの過渡期だからこそ生まれるおもしろさがあるかなと思います。プロジェクトのアウトプットを現代美術作品として見せたいのか、特殊なジャンルのものづくりとして見せたいかは非常に悩んでいました。
 
タナカ:もしかしたら、アーティストではなく研究者という立場がおもしろいかもしれません。
 
磯部:おかしみに尖ってほしいという気持ちもあります。表現として突き抜けていると、そういう特殊なジャンルなのだと言うこともできますし、アーティストとしても表現が明確になるかもしれません。
 
大西:うまいバランスで落とし込めるといいかなと思います。作品を考える上では、自身の思考の癖として論理が出てくると思うので、それをしっかり留めておけるように意識したいです。今回の面談では、作品にしていく、表現を突き詰めていくことから離れていく傾向があることをあらためて認識することができ、とても実りがありました。

—今後は、ドローンを飛ばす実験とリサーチを行うと同時に、作品としての表現方法を検討していきます。