平成30年度 選考結果発表

「平成30年度メディア芸術クリエイター育成支援事業」では、7月2日から7月20日の募集期間に集まった応募企画の中から、選考を経て計6件(育成支援A:4件/育成支援B:2件)の企画が採択されました。今後、具体的な支援が始まり、その進捗状況は定期的に本ウェブサイトでご紹介していきます。また、採択された企画の「成果プレゼンテーション」を2019年3月に開催予定です。

採択企画一覧

育成支援A(個人・団体)

《Generative 575 yyyy/mm/dd》(仮)(アートプロジェクト)/石橋 友也+新倉 健人
企画について:スマホとネット環境が行き渡った現代では、昨日のニュースやバズは、今日にはもう忘れられている。Twitter等のトレンドワードを引用し、俳句や川柳を学習したAIが「今日の一句」を自動生成し、SNSで広告配信を行う。配信成績をAIにフィードバックし、補正を繰り返す。これを毎日行い、人間の営みを機械の視点から描いた「今日の一句」をコレクションしていく。WEB上で生まれては消えていくコトバの刹那性と機械学習による日本語表現の「おかしさ」を探求する試み。

石橋 友也(ISHIBASHI Tomoya)
1990年生まれ。生命科学を学び、2014年早稲田大学大学院卒業。2011年より早稲田大学生命美学プラットフォーム「metaPhorest」に参加。バックグラウンドである生物学の知識や技術を援用した作品群(バイオアート)を始めとして、科学的なアプローチで表現活動を行う。2015年より広告会社に所属し、WEB/SNS/テクノロジー関連の広告企画・制作を行う。
https://www.shibashiishibashi.com

新倉 健人 (NIIKURA Kento)
1989年生まれ。データ・サイエンティスト/エンジニア。2014年東京工業大学大学院卒業(理工学研究科数学専攻)。微分幾何、特に高次元空間の収束と崩壊理論を専攻。2015年に広告会社に入社し、以降データドリブンマーケティング業務に従事。その一方で独自のディープラーニングの研究を行い、キャッチコピーに自然言語処理を導入した『AIコピーライター』を開発。

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第18回アート部門審査委員会推薦作品『金魚解放運動』(石橋 友也)


《ちいさいまよい家/ちいさいまよい家のために》(仮)(インスタレーション、販売型パフォーマンス)/内田 聖良
企画について:本作品は、「店」という形式と、流通する言葉・また声やモノが持つ他者の身体や自己の記憶へ接続するための「穴」を利用して、ポスト・インターネット時代の身体から生まれる「民話」的フィクションをつくる試みである。民話の技術・構造を現代の生活環境・テクノロジー環境に適した状態におきかえ、事実ベースの報道などとは違った観点で情報を伝える現代の「民話的表現」を目指す。

内田 聖良 (UCHIDA Seira)
インスタレーション、コンセプチュアルアート、パフォーマンスなどの方法で作品制作を行う。主に既存のサービスやシステムの流用、中古品と自身が執筆したテキストを用いる。「余白」を、今あるものとは「別のやり方」で行うための可能性と考え、「余白」をつくる「余白工事人」と名乗る。2012年よりデザイナーの清水都花と結成した「凡人ユニット」としても活動。
https://sesseee.se/

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第18回アート部門審査委員会推薦作品『余白書店』(内田 聖良/石幡 愛/小林 橘花)


《あたらしいくに》(アニメーション、マンガ)/最後の手段(有坂 亜由夢/おいた まい/コハタ レン)
企画について:静止画から生まれる空間、動画から生まれる空気を融合させた、マンガと映像の中間になるような作品を制作する。ミクロとマクロ、現在と太古を行き来し、破壊と再生を繰り返しながら新しい世界へと向かう。

最後の手段(有坂 亜由夢/おいた まい/コハタ レン)
Saigo No Shudan (ARISAKA Ayumu / OITA Mai / KOHATA Ren)
「最後の手段」は、2010年に結成した有坂亜由夢、おいたまい、コハタレンの3人からなるビデオ制作チーム。手描きのアニメーションと人間や大道具、小道具を使ったコマ撮りアニメーションなどを融合させ、有機的に動かす映像作品などを作る。MV『やけのはら「RELAXIN’」』で第17回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞受賞。七尾旅人『検索少年』PVコンテストグランプリ受賞。
https://www.saigono.info

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第17回エンターテインメント部門新人賞『やけのはら「RELAXIN’」』


《「どうぞどうぞ」をしらべる》(アートプロジェクト)/佐々木 遊太
企画について:日本を代表するお笑いトリオの代表的な芸、通称「どうぞどうぞ」の構造を、理論化と、それに基づく制作との揺り戻しによってリサーチする。「多様な背景を混在させるメディア」をテーマに、暮らしの中で避けては通れないコミュニケーションに立脚した芸から学びを得ることで、鑑賞者の背景を問わないおかしみを創出するための知見を蓄積する。

佐々木 遊太(SASAKI Yuta)
1982年生まれ。大学時代、終電を逃して宿泊したサウナにて、ホスト、ホームレス、ヤクザ、子ども、外国人など、様々な人が休憩室のテレビを見て共に笑っている状況に遭遇し、ピントが明確になる。以降、多様な背景を混在させるメディアを目指し、制作を続けている。街頭紙芝居師(東京都公認ヘブンアーティスト)、科学館の展示スタッフを経て、現在は2つの大学の情報系、美術系の部局にて研究員をしている。
http://sasaki-sasaki.com
http://dozo-dozo.tech/

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第15回エンターテインメント部門審査委員会推薦作品『即席紙芝居』
第19回エンターテインメント部門審査委員会推薦作品『ズームイン顔』


育成支援B(団体)

《エレクトロニウムプロジェクト》(仮)(リサーチ、ソフトウェア)/スズキユウリスタジオ(代表:スズキユウリ)
企画について:この数年、人工知能(AI)の開発が格段に進み、今まで電気的に不可能であった自動作曲、機械が考える音楽がプログラミングにより可能になりつつある。本プロジェクトは、作曲家レイモンド・スコット(1908年-1994年/米国)が晩年に手掛けていた未完成の自動作曲装置『エレクトロニウム』をソフトウェア上で実装し、多くの人が人工知能との対話やコラボレーションを楽しむプラットフォームを構築する。

代表:スズキユウリ(SUZUKI Yuri)
1980年、東京都生まれ、ロンドン在住。サウンド・アーティスト、エレクトロニック・ミュージシャン。1999年から2005年にかけ、アートユニット「明和電機」のアシスタントワークを経て、2005年に文化庁新進芸術家海外研修制度により渡英。ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(英国)に進学し、以降、音と人間の関係を問う作品を制作。テート・ギャラリー・ロンドン(英国)、ムダム・ルクセンブルグ(ルクセンブルク)、ナム・ジュン・パイク・アートセンター(韓国)など、世界中で作品を展示。2014年に『OTOTO』『カラー・チェーサー』がニューヨーク近代美術館(米国)のパーマネントコレクションとなった。
http://yurisuzuki.com

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第20回アート部門審査委員会推薦作品『The Global Synthesizer Project』(SUZUKI Yuri / Chris HOWE / Cyril LANCE / Emmy PARKER / Eric CHURCH / Logan KELLY / Sylvan WILLIAMS / Trent THOMPSON)


《水江西遊記(仮)》パイロット版製作 –日本発、新しい実験の場としての長編アニメ・プロジェクト–(アニメーション)/《水江西遊記(仮)》製作委員会(代表:水江 未来)
企画について:何度も映像化されてきた『西遊記』だが、まだ語られていないエピソードや、アニメーションの持つグラフィック的快楽性の追求が不十分など、原作の中には、映像化するための肥沃な大地がまだ残されている。長年に渡って短編の抽象アニメーションを制作してきた水江未来が、これまでやってきた方法論を応用し、全く新しい演出で子供向けのサイケデリックミュージカル映画を製作する。この企画はそのためのパイロット版の製作である。

代表:水江未来(MIZUE Mirai)
細胞や微生物、幾何学図形をモチーフにした抽象アニメーションを、16年間にわたり数多く制作し、ベネチア国際映画祭・ベルリン国際映画祭でのワールドプレミア上映や、アヌシー国際アニメーション映画祭での音楽賞、CANAL+CREATIVE AID賞の受賞などを果たす。2014年には、これまで制作した短編作品を再編集して1本にまとめたオムニバス長編映画『ワンダー・フル!!』が、全国15館で劇場公開された。
https://miraifilm.com

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第7回アニメーション部門審査委員会推薦作品『FANTASTIC CELL』
第11回アニメーション部門審査委員会推薦作品『LOST UTOPIA』
第12回アニメーション部門審査委員会推薦作品『DEVOUR DINNER』
第13回アニメーション部門審査委員会推薦作品『METROPOLIS』
第15回アニメーション部門審査委員会推薦作品『MODERN No.2』
第17回アニメーション部門審査委員会推薦作品『WONDER』
第18回アニメーション部門審査委員会推薦作品『POKER』(水江 未来/中内 友紀恵)


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