2019年までクリエイティブグループ「ユーフラテス」に所属し、2020年に独立した映像作家/グラフィックデザイナー/視覚表現研究者の石川将也さん。採択された企画『Layers of Light』は、石川さんが発見した光の現象を新しい立体アニメーション装置として探求する試みです。

アドバイザー:土佐尚子(芸術家/京都大学大学院総合生存学館アートイノベーション産学共同講座教授)/和田敏克(アニメーション作家/東京造形大学准教授)

コロナ禍で、少人数に見せる場を有効活用する

石川将也(以下、石川): 2020年12月に行う予定だった個展については、新型コロナウイルス感染症の状況を受け、予定していたスペースでの開催は延期することにしました。一方で、最近友人と始めたシェアオフィスのスペースを使い、規模を縮小して完全予約制で展示をする予定です。もともとは12作品程度の展示を予定していましたが、スペースがさほど広くないので、縮小して8作品程度の展示となる予定です。
コロナの状況を受けてどう判断すべきか悩みましたが、今回は来場者ひとりずつに対応できるような体制で展示をしようと判断しました。会期は2月8日から21日を予定しています。

土佐尚子(以下、土佐):この状況下で、予約制にすると人数もこちらでコントロールできますし、プロジェクトの進行状況としても、不特定多数が来場する展示ではなく、来場者ひとりひとりと直接話せる場にする選択は正解だと思います。また、予約制もいいですが、石川さんが今見てもらいたい、意見をもらいたいと思う人を直接招待してみてもいいと思いますよ。例えば、ひとり1時間程度でスケジュールを組んで応対していく。来場者としても満足度が高くなりますし、しっかりとフィードバックを得られるので、石川さんにとっても有意義な場になるのではないでしょうか。事後アンケートなどもさらに充実しますし、授業を受け持っている学生らも招待してみてもいいのでは? 自分より若い人たちからのフィードバックはとても大切です。

和田敏克(以下、和田):オンラインのツールで時間指定で招待をしたりアンケートをとったりするのが便利そうですね。鑑賞者もアクセスもしやすいですし、反応が返りやすいと思います。

石川:招待制はとてもいいですね。展覧会の告知はすでに始めていますが、予約フォームのオープンはまだ少し後なので、それまでに見てもらいたい方々を招待してみます。招待枠で埋まらなかった空き時間はフリーで予約を受け付ける2段階もよいかもしれません。

土佐:特許についてはどうなりましたか?

石川: 12月に出願が無事終了したので、個展などでの発表や告知が可能になりました。

土佐:特許出願ができたのならその技術をオープンにしていくと、実用面でも活用できると思いますよ。私が思いつくのは注意喚起や誘導のサインです。例えば、三菱電機グループの施設、METoA Ginzaの床にはアニメーションで誘導サインが投影されています。今回特許の出願をしたこの装置は、そうした工場や商業施設などのサインにも活用できるのではないでしょうか。アートの表現とは方向性が少し変わってきますが、この装置が持つ特性をまた違った角度から捉えてみると、石川さんの仕事の幅は広がるでしょう。この支援事業に採択されたクリエイターで特許の出願をした方は初めてですが、大事な業績になりますし、これからはもっと増えていくと思いますよ。

実験を経ての、新たな発見

石川:そうですね、私自身も作品をつくりながら、この装置は実用的な用途にも活かせる気がしています。特性をさらに深掘りして、色々な可能性を探ってみたいと思います。
作品の進捗状況についてですが、浅草で計画していた内容も含めてお話ししたいと思います。
まず、前回お見せした、スクリーンを動かすことで映像が剥がれていくように見える現象を、鑑賞者自身がアクリル板を動かすことで体験することを考えていたのですが、不特定多数が作品に触れることは避けた方がいいと考え、代わりにロボットアームで作品を動かすことにしました。そのプログラムも、知人のアーティストの協力のもと制作中です。動きをロボットアームに記憶させて、投影する映像もそれに合わせて動かせば、光をアクリル板で運ぶ表現もできるのではと考えています。
当初予定していた会場は広かったので、前回アドバイスをいただいた、装置を複数組み合わせて大きな作品をつくるプランもありましたが、シェアオフィスではそれができないので、ひとつの装置から複数の映像を順番に流すなどして省スペース化を図るつもりです。展示準備を進めながら、新しい発見がありましたので、今日はそれをお見せしたいと思います。

―映像を映し出す機材の準備をします。

和田:準備しているところも、みていると期待が高まりますね。

石川:お待たせしました。これまで、スクリーン同士の間隔を統一していたのですが、あえて高さを変えるとまた違った表現ができることに気がつきました。たとえばこのように、オブジェクトがアクリルの層を上下しながら移動することで、ボールが跳ねているような動きが表現できます。

―実際に投影してみます

和田:これはすごい。

土佐:遠近感が生まれましたね。上の層に映っているオブジェクトの影が最下層に落ちているように見えますが、これは……?

石川:影のように見えますよね。実は、映像のベースの色に赤を少し足したんです。すると、その赤色がうっすらと最下層全体に投影されます。対して、オブジェクトは別の層に投影され、最下層には何も映らないので、そのぶん、そこが黒く影のように見えるという仕組みです。投影している映像としては、色を変えながら円が水平移動するだけのアニメーションですが、それぞれの色を受け止める層が違うために、上下にバウンドしているかのように見える。ただ、少し演出はしています。円が最下層に落ちたときにつぶれて見えるよう、そこだけ円を少し大きくしています。

和田:本当に、オブジェクトが跳ねて移動しているように見えますね。アクリルの各層が、アニメーションの中割りのようになるということですね。アニメーターとしてはすごくおもしろい現象です。素晴らしいです。

石川:ありがとうございます。自分としてもこれを発見し、表現が豊かになり「アニマシー」(生物らしさ)も感じられるようになったのではないかと思っています。スクリーン同士の間隔を均等につくったプロトタイプから、あえて間隔をずらしてみたことで生まれた発見でした。

2月の予約制個展に向けて

和田: 2月の展示ではこの作品も見られるのでしょうか?

石川:はい。目玉のひとつと考えています。

和田:こうしたミニマルなアニメーションだと、アニメーション作家の古川タクさんなど好きかもしれません。声をかけてみますね。

石川:それはとても光栄です。ありがとうございます。

土佐:真っ暗な中で映像だけ見ると、このアクリル板の仕組みが伝わりにくいかもしれません。会場では装置もある程度見えてほしいですね。

和田:キャラクターやタイポグラフィも投影できますか。この装置の原理を、装置自身に説明させられるとおもしろそうですね。3月の成果発表イベントでそういったものがあるとよさそうです。

石川:実は、同じことを私も考えていて、タイポグラフィの投影も試してみています。他にも説明展示として今考えているのは、階段状に重ねたスクリーンの上を、文字が徐々に動きながら解説する、というものです。はじめは、展示台そのものに文字が投影されていて、説明が進むにつれて文字が移動していき、説明の内容に沿って、徐々に各層を登っていく。そういった見せ方ができると面白そうです。

和田:とてもいいと思います。楽しみです。

―最終面談では、2月の個展についての報告と、3月の成果発表に向けての制作の進捗報告がある予定です。