令和2年度メディア芸術クリエイター育成支援事業「国内クリエイター創作支援プログラム」に採択された国内9組のクリエイターが、本事業で得たものについてコメントした映像を公開しました。

令和2年度の成果発表イベント「ENCOUNTERS」では、2021年3月5日(金)〜14日(日)の期間、東急プラザ銀座にて各プロジェクトの紹介展示をおこなっています。

〈プロジェクト紹介展示〉
会期:2021.3.5 FRI – 14 SUN(11:00 – 19:00)
会場:東急プラザ銀座 3F・4Fみゆき通り側エスカレーター横、10F・11Fパブリックスペース
主催:文化庁
協力:東急プラザ銀座
企画・運営:メディア芸術クリエイター育成支援事業事務局[CG-ARTS内]
入場無料

石川 将也

《Layers of Light》

土佐 尚子:
私との面談を通して、石川さんの企画は、作品の社会的産業的な展開に知見を得たと思います。作品のアイディアに関して特許を取る社会的・商業的意義について説明し、本人も理解されたようでした。今後、この作品のしくみを様々な人に公開し、その用途や新たな展開に関して知見を得るために、研究会を開くと言っています。2月に個展を開かれたようですが、その際に、招待制にするなどアドバイスをしました。今後は、この作品(システム)を企業スポンサーか、国の助成金を得て、等身大の大きな作品にして、観客が作品の中に入り、楽しむ、学ぶなどの展開していくことや、芸術科学会などで論文を書き思考をまとめておくこと、研究者思考なので、博士号も取ることを期待し、京大でお待ちしています。

和田 敏克:
かつてウォルト・ディズニー・プロダクションはマルチプレーン撮影台を開発した。それは複数のレイヤー間に特定の距離を持たせて撮影することによって、スクリーンの平面映像に立体的な錯視をもたらし、その映像に人々は驚いた。そして2020年、石川将也さんは光の三原色をレイヤーに分け、そこに距離を持たせて「光のレイヤー」を開発した。このシステムのおもしろさは、分かれたレイヤーの距離による空間効果を、実際の肉眼で体験できることである。ディズニーとは真逆に、平面的な映像を分離させて、リアルな立体空間をその場で作りあげている。だから錯視ではないのだ。あ!三角形が飛び上がった!影と分離していく!これが実際に目の前で起こっている不思議。光が三色の層に分かれて動く。たったそれだけのことが、とても面白い。静かに頭の中で興奮しながら、思わず見とれてしまう。シンプルなデザインで本質を掴むことに長けた石川さんは、この原初的な光の分離を用いて、レイヤーの距離を目前で変化させるなど、次々と楽しくカワイイ箱庭のようなアイデアを見せてくれているが、これからさらに、大きさや素材、距離の工夫で、その可能性は広がってゆくにちがいない。ゲームやサイネージなど、その場で体験する不思議な映像システムとして、近い将来、さまざまに日常空間で活用されてゆくことだろう。


大西 拓人

《ドローンが来ると、風が吹く》

磯部 洋子:
初回面談から、本質的で厳しい問い直しがつづき、大変悩まれながら試行錯誤されたプロジェクトだったと思います。最先端のテクノロジーが本来の役割を超えたところで創り出す「おかしみ」に惹かれるご自身に、真剣に向き合ったことで、回を重ねるごとに自分なりの表現への迷いがなくなっていかれたように感じました。小手先の上手さや辻褄合わせの完成ではなく、破綻すれすれまで突き詰めて自己の表現を昇華していくことができれば、作品も活動自体も、これまで以上に、まだまだ面白くなっていけるように思います。人生一度きりですから、自分の殻を破って、ますます自分の表現の世界を深めていっていただければと思います。次の展開に期待しています。

タナカ カツキ:
新しいテクノロジーに触れるとき、また慣れていない関係の中で見落としがちな「おかしみ」にフォーカスし、そのいくつかを取り出す試み。企画を聞いている段階では楽しそうですが、実際にそれを目の前に再現させても、鑑賞者にうまく伝わるのか、作品の落としどころに大変苦労されたと思います。それでも執拗に考察を繰り返し飽くなき探究を繰り返す大西さんの姿に心を動かされました。おかしいのは大西さんだよ!と何度も思いつつ、創作者の姿にエネルギーをもらい励まされる。これもアートの醍醐味です。アドバイザーとして大西さんにお会いするたび大西さんのことがどんどん好きになっていきました。これからも大西さんの独自の風をふかせてください。


佐藤 壮馬

《おもかげのうつろひ》

磯部 洋子:
人から人へと伝染し、瞬く間に世界中に蔓延した新型コロナウイルス。気候変動や生態系破壊とも深い関係にある感染症で、私たちは「地球規模でのつながり」を強く認識することなりました。
個と不可分な「風土や民族」との関係性を紐解きながら「私」の範疇を超えた「私たち」としての思考を探索する佐藤さんの視点は、アフターコロナの新しい時代を模索する時代に響く作品だと感じました。当地域の方へ理解いただけるか、作品作りが成立するかもわからない状態からスタートし、挑戦の大きい作品づくりだったと思いますが、先端技術から生み出された「御神木」は、確かな魅力で心に響く力を持っていると感じました。今後の作品に心から期待しています。

和田 敏克:
佐藤壮馬さんの物に対する眼差しには、敬意がある。古来から存在するさまざまな事象やその成り立ちを丹念にみつめ、思索をめぐらせている。世界を巡りながら創作を続けてきたからこその落ち着きと深さをもって、いま目の前に存在するものの中、そして自分の中にもある「何か」を静かに視つめている。佐藤さんにとって3Dスキャニングとは、その「何か」を浮かび上がらせる行為なのだろう。ただ形状をコピーすることではないのだ。佐藤さんはまず、ひたすら人の考えや話に真摯に耳を傾ける。そして、その中にある意味を尊重する。だから、今回の『おもかげのうつろひ』では、大湫大杉と出会い、自身の手で実際に感触を確かめ、杉の周囲にある風土や人々に対峙してきた佐藤さんの軌跡と敬意が、そのスキャンデータの「行間」には大量に詰まっている。しかして、データそのものにその存在は込められるのか。込められないからこその「何か」が重要なのか。佐藤さんの作品を前にその「存在」を感じながら、私たちも思索をするほかない。そして丹念に、精緻にものと向き合う佐藤さんにしか、その問いかけはできないのかもしれない。