メーカーで技術戦略のためのリサーチやコンテンツ開発をする傍ら、個人活動として「テクノロジーと現実のギャップに生まれるおかしみ」を軸に作品制作している大西拓人さん。文化庁メディア芸術祭では、作品『Contact』が第21回アート部門で審査委員会推薦作品に選出されています。本企画『ドローンが来ると、風が吹く』(仮)では、ドローンが飛び立つ際に風を起こす特性を用いた作品群を制作します。

アドバイザー:磯部洋子(クリエイター/sPods Inc CEO/Spirete株式会社COO/Mistletoe株式会社プロデューサー)/タナカカツキ(マンガ家/京都精華大学デザイン学部客員教授)

体験検証用の作品展示を開催

大西拓人(以下、大西):前回の振り返りとしては、僕がドローンに見出した「おかしみ」をどう作品化して、鑑賞者に伝えるかというところに課題がありました。そこを自分なりに考えつつ、2月6日から2日間、京都で展示を行いました。日を分けてふたつの体験検証用の作品を展示し、お客さんとのディスカッションを行いました。
ひとつめの作品は、風船を使った『Touchless Touch #1』です。ここではドローンが起こす風によって、ドローンが風に触れる様子を観察します。風によって上下する風船の動きと、自身の起こした風の跳ね返りにより揺れるドローンの動きという、ふたつの動きがバランスを保つ瞬間に、ドローンを主体とするインタラクションを見出すことができるという作品です。
ふたつめの作品は、4台のドローンを使った『Touchless Touch #2』です。ここでは複数のドローンの飛行が互いに干渉している様子を観察します。それぞれのドローンは、静止と直線運動のみのシンプルなプログラムで指示されており、互いの風に影響を受けることで本来と異なる動きを行います。風の影響は、静止しているドローンにも現れ、ドローンの持つ自動位置制御機能により、それぞれのドローンが懸命に本来の位置を目指す姿を見ることができます。

ふたつの作品を通して、ドローンや風船の動きに興味深いことが具現化できたと感じました。スピンしたり後ずさりしたりするといった、さまざまなドローンの動きやインタラクションも発見しました。こうした動きを鑑賞者自身が観察し、有機的な要素を見出すことでドローンを「応援」するような気持ちに到達してもらうことが理想的な展示体験のあるべきかたちであると思いました。今後の個展では自分自身がツアーガイドのような役回りとなることも検討しています。

次回の個展に向けた技術課題がふたつあります。ひとつめは、ドローンの飛行命令の精度の検証です。使用しているTello EDUというドローンは、直線的な移動でも曲がって飛行してしまうなどの精度的な問題があります。本作品では風によってドローンに命令外の動きを生み出すことが要のため、製品個体の誤差により命令外の動きが出てしまうことを避けたいと思っています。そのために、現状のドローンの精度向上のための方法を考えることや、別ドローンの購入を含めた検証が必要だと考えています。
もうひとつの課題は、マーカーのリデザインについてです。Tello EDUを用いた場合に位置制御の精度を高めるためにはMission Padと呼ばれるマーカーを用いる必要があります。しかし、マーカーのデザインが派手すぎて作品の体験を阻害するため、マーカーの構造を技術的に解析し、無機質なデザインのマーカーにつくり直したいと考えています。

鑑賞者の反応から作品の魅力を見出す

タナカカツキ(以下、タナカ):2月の展示でのお客さんとのやりとりについて、具体的にきかせてもらえますか。

大西:導入としてドローンが飛ぶ仕組みについてのテクノロジー面での説明をしながら、ドローンの動きを一緒に見てもらうという流れで鑑賞してもらいました。展示を行うにあたって、お客さんにとってドローンがどれだけ身近な存在かが気になっていたのですが、あまり身近ではなかったことが分かりました。作中のドローンの使い方を素直に受け入れている方が多かったです。ドローンが飛ぶこと自体の目新しさに引っ張られずに、静止した後の動きの「おかしみ」を、落ち着いて見てもらうことが大切だと気づきました。お客さんの反応としては「何を見せられているのだろう……」という感じもありましたが、「観察」という遊びに好意的に付き合ってもらったと思います。

タナカ:お客さんから「それで?」というつっこみはありませんでしたか。

大西:特にありませんでした。ドローンが世の中的にはまだあまり身近でなく、事前にドローンの知識がなかったのが成功の要因かもしれません。フラットな気持ちで見てもらうことができたように思います。

タナカ:それは大成功と言えそうですね。お客さんに説明して、反応を見ながらの展示だったとのことですが、そういうことをしている自分自身(大西さん)を客観的に振り返るとどう感じますか。

大西:自分自身を振り返ってみると、一生懸命喋ったなという感覚があります。お客さんの反応を見ながら、色々説明を変えるなどして。ドローンの動きを一緒に楽しむことへの手応えを感じることができました。

タナカ:その姿は想像できます。展示の段階では「応援」という言葉はまだ出てきてなかったですよね。展示の振り返りのなかで出てきた概念だと思いますが、「作品を応援している状態」というのはとてもユニークです。それ自体が「おかしみ」に至っていると思います。

自分なりの表現に焦点を当てる

磯部洋子(以下、磯部):今日の資料を見たり、コンセプトについてのお話を聞いたりするなかで、私も応援したくなりました。こういう心の動かされ方もあるのかなという気持ちになりました。透明な板を使うなど、作品は非常にミニマルにつくられていますね。飾り気のないもので作品を構成するところにこだわりがあるのかなと感じました。

大西:自分のスタイルとして、最低限のものに削ぎ落とす傾向があります。何かを使うときに、その製品について深く考える癖があって、その結果、その製品を使わなければいけない理由に至らず、最終的に排除するものも多いのです。

磯部:細部まで突き詰めて考えるなかで、ご自身の表現がだんだん定まってきたのですね。好きなのだろうな、ということが伝わってきて、そこにも心を掴まれました。探求の果てに、ドローンの風力の謎も解き明かせそうですね。プロダクトや技術への愛が深く、そこから「おかしみ」を生み出していることもまた魅力だと思います。展示では「熱い思い」をお客さんに見せられるようにすることが大事だと思います。

大西:今後も継続して、ドローンの飛行する様子を観察しておもしろみを追求していきたいと思います。

タナカ:個展のDMのビジュアルもよかったと思います。大西さんの作品は、ツアーガイド込みで見せていくのがよいのではないでしょうか。

―今後は、次回の個展の作品や会場構成などを検討していきます。