これまで自作自演のうたとアニメーションを組み合わせたアニメーション作品を制作してきた姫田真武さん。今回制作している作品は、『ようこそぼくです』シリーズの第4作目となる『ようこそぼくです4』です。『レッツコリツ』『ようこ、素朴です』『こそこそぼくです』の3曲を収録予定とのことです。

担当するアドバイザーはアニメーション作家の野村辰寿氏とNTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員の畠中実氏です。

余韻になにを残すか

―中間面談は今回は、線画と仮の歌が入った状態の『レッツコリツ』の上映から面談がスタートしました。

畠中実(以下、畠中):面白いですね。この歌もコーラスも自分自身で歌ってるんですよね?

姫田真武(以下、姫田):そうです。現段階では、アニメーションと歌のタイミングをあわせるために仮録音していて、それにあわせて絵をどんどん描いていく予定です。

畠中:ダブルトラックもきれいに出ていて面白いですね。

野村辰寿(以下、野村):今回の姫田さんの作品は、反復的な要素が新しい表現ですね。ループのような表現がうまくいっていると思います。孤立という言葉が持つ、冷たくて硬い感じが前半にあるので、そのイメージで押してくるかと思っていたら、途中から柔らかい要素がどんどん入ってくる。

姫田:動きや形の特性を意識して作っています。

畠中:音楽もイメージも楽しそうで、最後の方はあまり孤立感がなくつながっていきますよね。メッセージとしては、孤立は怖くないということなのか、ある意味で孤立することを薦めているというのか、どちらなのでしょうか。

姫田:どちらかというと後者で、孤立がつながっていくイメージです。

畠中:孤独感があっていいと思うんですが、自分の考えをどう作品の演出として表現していくかということでは、孤立を恐れないみたいなことを言おうとしている?

姫田:あまりメッセージっぽくはしたくないんです。『レッツコリツ』の内容的にもそうなんですけど、孤立を強調しすぎてしまうのはちょっといやだなと思っていて。単純に♪コリツ♪コリツと言い続けている中に動きがはまっていって、そういう印象が漂えばいいかなと思っています。

野村:どんな作品でも最終的には残る印象が大事ですよね。曖昧な印象だと残りにくい。あと気になるのは、3本の曲がつながったときのそれぞれの印象を、今の時点ではどう差別化して考えているかについてですね。それぞれにキーワードのようなものをはっきりさせる必要はないけど、姫田さんの中での方向性を確認したいですね。

姫田:『レッツコリツ』は僕の中でとてもポジティブな歌なんです。これを作った結果がなにかにつながって、例えば、上映会で歌うことができるかもしれない。それは孤立がつながった結果でもあるし、自分の中ではポジティブな意味合いの歌なので、アニメーションの色も明るくしようと思っています。ちょっと寂しさもあるんですけど、それをはねのけて明るい感じです。ひとりずつ孤立仲間を増やしていって、最後は散り散りに別れるイメージです。

畠中:改めて聴くと、サビのリフレインは音としては変わらないけど、作品をタイムラインに沿って追っていくと、あるグラデーションをなしているように感じられますね。歌は変わらないんだけど心象はどんどん変わっているような。それが視覚的にも見えるといいですよね。例えば、単純に言うと寒色から暖色に段階的に変わっていくような色を感じたんですよ。現段階では色がなくても。そういう意味でも、メッセージと合わせて演出することができたらと思ったんです。

野村:最終的には孤立万歳!という歌ですよね。内容は数え歌ですが、姫田さんの中でエスカレーションのようなものはついているんでしょうね。

有機的な魅力をどう伸ばしていくか

―続いて、『ようこ素朴です』の仮歌も聴かせてくれました。

姫田:『ようこ素朴です』は、基本、「ようこ」と「僕」がダンスするような雰囲気になります。そして『レッツコリツ』と『ようこ素朴です』の間にもちょっとした寸劇を入れるつもりなので、けっこう尺が長くなります。

畠中:『レッツコリツ』から『ようこ素朴です』へのブリッジを作るのは結構大変そうですよね。

姫田:『レッツコリツ』で孤立した「僕」のところにようこさんが現れて歌が始まります。

畠中:普通の映画はかなり構造的で、各シーンのつながりも説明できるようになっている。B級映画にはそうじゃないものはあって、そういうものは普通のメソッドではダメだと言われるけれど、姫田さんの作品はあまりつじつまを合わせる必要がないから飛躍があってもいいと思うんです。それぞれの歌のパートで、「僕」っていうものがいろいろな形に変化しているのがわかるので、案外それだけで伝わったりしちゃうものだから、細かく分けたシーンの中では、そのシーンごとの「僕」の立ち位置は決めておいたほうがいいと思うんです。

野村:同感です。得体のしれないおもしろさが潜んでいる感じがひとつのおもしろさだと思います。なので、キャラクターの設定としてそれはひとつの変化だったりもするし、そのあたりを描く時のポイントとしてやった方が、それぞれのエッジが立つと思います。3本を通した中の混沌とした感じはならずに、それぞれが立って、いい混沌になるように調整できるといいですね。

畠中:そうですね。とはいえ、孤立にそれほど重きを置かず、音声詩のように意味のない音声のおもしろさだけの詩のようなものだと考えると、特に心象表現がなくてもいいこともありますよね。だとすると、もっと訳がわからなくてもいいんじゃないか、とも思います。もう少しハメをはずしてもいけますね。

野村:おそらく、3本がつながった時のバランスが大事な気がするんです。今のうちから役割を決めておくといいと思います。主人公の紹介、出会い、そして完結みたいなのが漠然とあると思うのですが、それに則りながら、姫田さんの持っている有機的な魅力をどこまで伸ばしていくかですね。あとは仕上がりを楽しみにしてます。ここで僕らが言ったアドバイスも、実作業する過程のなかで潜在的に残っていればいいかなと思います。最後は自分の判断なので。

姫田:僕の場合だと、いただいたアドバイスは後々に活かされる場合が多いので、今回頂いたアドバイスも参考にさせて頂きます。

―最終的にはパフォーマンスとあわせた上映を目標に、最終面談にむけては『レッツコリツ』の完成と『ようこ素朴です』のビデオコンテの完成を目指します。