これまで自作自演のうたとアニメーションを組み合わせたアニメーション作品を制作してきた姫田真武さん。今回制作している作品は、『ようこそぼくです』シリーズの第4作目となる『ようこそぼくです4』では『レッツコリツ』『ようこ、素朴です』『こそこそぼくです』の3曲を収録予定とのことです。

担当するアドバイザーはアニメーション作家の野村辰寿氏とNTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員の畠中実氏です。

3年ぶりのオリジナル作品完成への第一歩

姫田真武(以下、姫田):『レッツコリツ』が完成して、次にやっと『ようこ、素朴です』に取りかかろうとしています。

畠中実(以下、畠中):よくできていますね。

野村辰寿(以下、野村):素晴らしいですよ。リズムにあわせた編集をしていて、(数え歌としての)カウントしている感じがコンテよりわかりやすいですね。

畠中:部屋のシークエンスが繰り返しになっているところが効果的ですよね。非常にいいですよね。テレビで流れておかしくないレベルの作品になっていますね。

姫田:「孤立」というテーマは、テレビ向きではないかもしれないですけどね(笑)。

野村:曲がまだできていなくて微妙と言っていたけれど、その微妙さがとてもおもしろく効いているし、それが知らないうちに見入ってしまう楽しさに繋がっているからすごくいいと思います。あと、アナログで描いた、背景のデジタル感が姫田さんの作品にとっては新しい感じがしますね。このざわつきはすごく効いていますよ。

姫田:今回、キャラクターは手塗りをしたんですけど、もっと簡単に、なるべく短時間でやるべきだったと強く思いました。

畠中:長く時間をかけ、こねくり回すことでよくなくなってしまうということはありますけど、この作品に関して、はそういう印象は受けないですね。

野村:今までのテンポが速くてどろっとした世界観に対して、今回のポップな切れ味がすごくいいような気がしますけどね。オリジナル作品が3年ぶりにできて、どうですか?

姫田:うれしいです。でも、3曲全てが完成してから発表したいので、全体の中で2分だけがようやく完成した、という感じですね。あと2曲あります。

3曲のギャップが生む、豊かな表情

―続いて、『ようこ、素朴です』『こそこそぼくです』の録音された歌のデモが披露されました。

姫田:『レッツコリツ』から寸劇を挟んで、『ようこ素朴です』に行きます。これはまだ仮歌です。

畠中:空間表現は全編でこういうタッチなんですか?

姫田:そうですね.『日本の素朴絵』(矢島 新、2012、パイインターナショナル)という画集があって、それをすごく参考にしています。背景は素朴絵のようなタッチにする予定です。

畠中:平安時代や室町時代のマンガみたいな感じですよね。

野村:背景はアナログで描きますか?

姫田:背景も線もアナログで描いて、処理だけをデジタルでやる予定です。手書きのテクスチャーを貼り付けようと思っています。その方が、制作スピードが速くなるかなと思っています。

野村:『レッツコリツ』とのギャップもいい感じでありますね。仮歌では、女の人の部分も姫田くんが歌っているけれど、誰か他の人に頼むんですか?

姫田:そうですね。女の人に歌ってもらおうと思っています。先日、アニメーション作家の水江未来さんのイベントの中でこの歌だけを先行公開したんです。僕が『ようこ、素朴です』も歌ってとても楽しかったので、自分が歌うバージョンも作ってもいいかなと思いました。

畠中:2曲目、3曲目の歌もよくできていると思います。

エンターテインメントとしてのプレゼンテーション

畠中:2月の成果プレゼンテーションでは寸劇もセットでやるんですか?

姫田:曲と曲の間の寸劇は、ゆくゆくは入れる予定なんですけど、2月の地点でここまでアニメーションをのせられないと思うので、寸劇部分は実演をしたいですね。あと『レッツコリツ』は実際に歌おうかなと思っています。

畠中:それは素晴らしい。

姫田:生の寸劇だと長さが自由じゃないですか。それが理想なんです。

野村:映像を途中で止めて、生で寸劇をやって時間を増やすこともできますね。

姫田:そうですね。合わせて10分くらいになりそうです。理想は成果プレゼンテーションまでに3曲仕上げたかったのですけが、多分無理だと思うので、『レッツコリツ』『ようこ、素朴です』は絶対に仕上げて、『こそこそぼくです』は予告編のようなものを作れたらいいなと思っていますので、これは映像なしで歌だけ歌おうと思っています。

畠中:3本そろったところがはやく見たいですね。

野村:プレゼン自体も画期的になるんじゃないかなと思います。2本完成させて、それがちゃんとエンターテインメントのショーとしてプレゼンテーションできるのは圧倒的な強みですよね。2Dのアニメーションと別のディメンションを持つことは、姫田くんの強力な武器だと思います。

畠中:上映だけではなく、演劇っぽいフォーマットでもできますしね。

姫田:できたらしたいですね。

―アニメーションも歌も制作が進んでいるようです。成果プレゼンテーションではアニメーションだけではなく生歌も聴けるとのことで、今から発表が楽しみです。