平成28年度 選考結果発表

「平成28年度メディア芸術クリエイター育成支援事業」では、5月17日から6月6日の募集期間に集まった応募企画の中から、選考を経て計6件の企画が採択されました。今後、具体的な支援が始まり、その進捗状況は定期的に本ウェブサイトでご紹介していきます。また、採択された企画の「成果プレゼンテーション」を2017年2月に開催予定です。

採択企画一覧

《楽器を纏(まと)う》(インタラクティブ・サウンドアート)/金箱 淳一・石上 理彩子
企画について:テキスタイルが持つ物質の魅力と、デジタル技術の融合がもたらす可能性について考えるプロジェクト。
今回は「楽器」をテーマにテキスタイルを再考する。
衣服に楽器の機能をもたせることで、楽器と人間との距離を「限りなく0」に。
服のデザインと楽器の機能を相互に考えながら、実用に耐える楽器の制作を行なう。
楽器と人間との距離を近づけることで、演奏をより身近なものにすることを目標とする。

金箱 淳一(KANEBAKO Junichi)
長野県北佐久郡浅科村(現:佐久市)生まれ。岩手県立大学、情報科学芸術大学院大学卒業。玩具会社を経て大学助手、非常勤講師を勤め現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員。障害の有無を問わず音楽を楽しむための道具「共遊楽器(造語)」を国内外で発表している。
http://www.kanejun.com/

石上 理彩子(ISHIGAMI Lisako)
幼少期から芸術に興味を抱き美術大学に入学。卒業後、渡仏。「École de la chambre syndicale de la couture parisienne」でオートクチュールのデザインと立体裁断の技術を学ぶ。帰国後テキスタイルデザイナー、美術大学勤務を経て2014年ファッションとジュエリーのブランドmoilのデザイナーとして活動。
http://moil-il.com/

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第11回エンターテインメント部門審査委員会推薦作品『Mountain Guitar』(金箱 淳一)


《Green》(仮)(アニメーション)/久保 雄太郎
企画について:ある法則の中で展開していく、ノンナラティブ短編アニメーション。動きとその根底にある、仕組み、法則(ルール付け)といった関係性に焦点を当てた作品。また、音もアニメーションの構造と付随する形での法則、仕組み、を構想中。作品尺は3〜4分を予定。

久保 雄太郎 (KUBO Yutaro)
1990年大分県生まれ。東京工芸大学、東京藝術大学大学院でアニメーションを学び、インクなどを使い手描きの短編アニメーションを制作。『石けり』が富川国際学生アニメーション映画祭2013オンライン最優秀賞受賞。『00:08』がアニマ・ムンディ2014ベストギャラリーフィルム受賞。その他にもアヌシー、ザグレブ、オタワなどの主要国際アニメーション映画祭にノミネート。日本アニメーション協会会員。
http://yutarokubo.com/

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第16回アニメーション部門審査委員会推薦作品『crazy for it』


《Animated Painting / Painted Animation》(仮)(アニメーション、平面作品)/林 俊作
企画について:ANIMATE (生命を吹き込む) する、という広い意味において絵画もまたアニメーションの領域内に含まれうる。その視点から絵画の在り方/現代アート作品としてのアニメーションの在り方を検証していく。絵画と映像の中間で流れる異なる時間性に着目し、横軸で時間が進行する絵画作品を制作、その素材を基にアニメーションを制作する。映像における時間軸の移動は絵画においては観客の身体の物理的移動に代替され、同時に映像内の全ての時間は絵画内の一つの空間に留まっている。

林 俊作(HAYASHI Shunsaku)
1992年大阪府生まれ。2012年から2015年まで3年間、文化庁新進芸術家海外研修制度の助成を受け、ロンドン大学ゴールドスミス美術学部にて現代美術を勉強する。2016年、ドレスデン映画祭アニメーション部門で金賞受賞。レインダンス映画祭やアルスエレクトロニカなど国際映画祭で入選・上映。
www.shunsakuweb.com

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第9回アート部門審査委員回推薦作品『国連安保理常任理事国極秘会議』
第10回アート部門奨励賞『Sagrada Familia 計画』


《高次元空間(非ユークリッド空間を含む)における可視化に依らない作品制作》(仮)
(アートプロジェクト)/平川 紀道
企画について:Kavli IPMU(数物連携宇宙研究機構)における滞在制作。キュビズムの数学者として知られるモーリス・プリンセットが、ボアンカレの業績と第4の空間次元の概念をピカソやデュシャンらに紹介したのが20世紀初頭。1936年、Dimensionist manifestoにおいてシラトーは、4次元空間におけるアートの領地は、未だ完全に手つかずであると書いた。キュビズムがインスピレーションを得るにとどまり、アートにとって未踏の地であり続ける高次元空間において、算術とコンピュータは何をもたらすだろうか。

平川 紀道(HIRAKAWA Norimichi)
コンピュータ・プログラミングによるリアルタイム処理を用いた映像音響インスタレーションを中心に国内外の美術展、メディア・アート・フェスティバルで発表。池田亮司、三上晴子の作品制作への参加、Typingmonkeysとしてのライヴ・パフォーマンス、ARTSATプロジェクト(衛生芸術プロジェクト)におけるアーティスティック・ディレクションなど、活動は多岐に渡る。
http://counteraktiv.com

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第8回アート部門優秀賞『Global Bearing』
第9回アート部門審査委員会推薦作品『DriftNet』
第13回アート部門審査委員会推薦作品『a circular structure for the internal observer』


《映像の彫刻》(仮)(アートプロジェクト)/安本 匡佑
企画について:本作品のコンセプトは映像の彫刻である。多数の映像ディスプレイによる物理的な形状と、それに映し出される映像による仮想的な形状によるものである。数十台のディスプレイ群は自動的にそれぞれの相対的位置関係を認識し、そこに存在している一つのインタラクティブな映像空間を共有する。ディスプレイは空間を覗く窓であり、そこに存在するオブジェクトの表面だけでなく断面を映し出し、その世界へと干渉する。

安本 匡佑(YASUMOTO Masasuke)
1980年生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程修了。博士(映像メディア学)。独自の観点から電子デバイスと身体を連携させた新しいインタフェースやゲーム、アート表現の研究開発を行っている。代表作に『VISTouch』、『参式電子弓』、『The Light Shooter』、PSP専用ゲーム『INFLUENCE』、iOSゲーム『Pavlov』などがある。
http://maya.ac

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第12回エンターテインメント部門優秀賞『君の身体を変換してみよ展』(佐藤雅彦研究室+桐山孝司研究室 / ユーフラテス)
第19回エンターテインメント部門審査委員会推薦作品『VISTouch』(安本 匡佑/寺岡 丈博)


《自転車乗りの少女 〜日本のどこかの町編〜》(仮)(映像)/吉開 菜央
企画について:『自転車乗りの少女』は、刻々と変化していく景色と音を、少女が漕ぎ進める車輪に乗せて、ただ見てただ聞く、映像音響作品です。第1作目は那須ショートフィルムフェスティバルで制作され、ロケ地は山、主役はわたし自身でしたが、今回ロケ地は日本のどこか人の住んでいる町、主役はその町の娘をスカウトしようと思います。現実に存在する町を素材に、嘘と事実を混在させながら進んでいく時間を、つくりあげたいと思います。

吉開 菜央(YOSHIGAI Nao)
1987年山口県生まれ。日本女子体育大学舞踊学専攻でダンスを学んだのち、東京藝術大学大学院映像研究科に進む。ぞくっとする感覚を素材に、見ること、聞くことの結晶である映像に落とし込み、作品を制作している。2015年に監督した自主映画『ほったまるびより』が文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞を受賞。同作はパフォーマンスと特殊効果を使った踊る映画の上演作品としても劇場やライブハウスで発表されており、台湾、韓国、日本などアジア各国で上演され、好評を博す。
http://naoyoshigai.com

文化庁メディア芸術祭での受賞・選出歴:
第19回エンターテインメント部門新人賞『ほったまるびより』