株式会社ねこにがしは、代表の川尻将由さんが監督した短編アニメ『ある日本の絵描き少年』が第23回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞するなど、多数の受賞歴があります。採択された本企画 『CHERRY AND VIRGIN』(仮)は、商業エロマンガ家の男とBL同人作家の女がマッチングアプリで出会うことから始まるアニメーション作品。主人公ふたりのキャラクターデザインを異なるマンガ家が担当することで、登場人物の個性を印象的に表現します。

アドバイザー:和田敏克氏(アニメーション作家/東京造形大学准教授)、磯部洋子氏(クリエイター/sPods Inc CEO/Spirete株式会社COO/Mistletoe株式会社プロデューサー)

—最終面談には、株式会社ねこにがしの川尻将由さんが出席。Zoomを使い、制作途中のデータを確認しながら面談を進めました。

制作体制の課題

川尻将由(以下、川尻):(本番用に仕上げた数秒間のカットを見ながら)この映像を3月の成果発表で公開しようと思っています。もう少しカット数を増やしたり字幕を付けたりするなど、展示に向けてアウトプットを検討していきます。
集まったスタッフはアニメーション制作の初心者が多いのですが、なかにはマンガの背景が得意な人などもいて、何とか進めることができています。レイアウトや修正作業などにかなり遅れが出てきていることが課題です。スタッフの人数は思った以上に確保できたのですが、僕がうまく回せていないのかもしれません。また、新型コロナウイルス感染症の関係でロケ地での撮影が難しく、背景用の画像の用意にも時間がかかっています。

和田敏克(以降、和田):新たに体制を立ち上げたばかりなので、まだこれからという感じがしますが。公開時期が遅れるといった致命的な遅れになっているわけではないですよね。

川尻:公開日自体が確定していないので何とも言えませんが、成果発表以降、スケジュールについても映画のプロデューサーと相談する予定です。現状、進行はゆっくりであるものの、カットなどの成果物ができだしたところという感じです。今の時点でロトスコープの撮影が終わっていればよかったのですが。仕事を振るための上流の作業が滞っていることが痛手となっています。

本番用のビジュアルや動きの確認

和田:制作が遅れているとはいえ、今見せていただいたように、本番用の絵ができあがりつつあるのはいいことだと思います。成果発表ではメイキング映像も出すと思いますが、キャラクターごとに絵柄が変わることが鑑賞者にも分かるような展示物を制作するといいのではないでしょうか。内容面における仕掛けが今回のプロジェクトの肝でもあるので、そういう部分が感じられるといいかなと思いました。

—再び制作途中のデータを確認しながら話を進めました。

川尻:(イラストレーターに描いてもらった背景画像を見ながら)これは前回の面談でお見せしたカットをアップデートしたものです。ほかのシーンも揃うのが大体3月ごろになりそうです。

和田:いい感じですね。冒頭に見せてもらった映像もクオリティが高く、人物の動きなどがとてもいいと感じました。

川尻:(人物をPC画面上で動かしながら)顔の角度が急激に変わるなどしない限り、AIによる色の追従も、自然にできていると思います。人物の動きの仕上げ作業の問題点は、確認がAfter Effects(Adobe社の映像制作のためのソフトウェア)を持っていないとできないことです。
 
和田:私の大学の学生なら皆After Effectsを持っているので、作業人員として紹介できる可能性はあります。
 
川尻:After Effectsで最終工程の確認をしながら仕上げられる人がいれば本当に助かります。その作業が今回の制作で一番大変な行程になりそうです。ぜひ学生さんを紹介していただきたいです。

クラウドファンディングの方法

 
磯部洋子(以下、磯部):クラウドファンディングの準備は順調ですか?
 
川尻:ビジュアル資料が準備でき次第、始める予定です。成果発表で使う映像に加えて、メインビジュアルがあるといいと思うので、キャラクターデザインをお願いしている人に、事前に「決めカット」を作画してもらう予定です。
 
磯部:クラウドファンディングのリターンには、何を設定される予定ですか?
 
川尻:モブキャラクター(群衆)が必要なシーンがあるので、そこに自身の絵を入れるというリターンを考えています。著作権は映画の配給元のものになるのでグッズなどの制作などは難しくなります。ただし、作業中のデータ(CLIP STUDIOのデータ)なら制作側で扱うことができるので、個人的に考えているのは、そうしたデータを配布することができないかな、と。アニメを自主制作している人たち向けに、データをリターンにすることも考えています。
 
和田:それは興味深いですね。昔はセル画もそういう意味で売られていましたから。
 
磯部:作品のファンにとっては、川尻さんと話したり一緒に映画を見たり、制作のお手伝いをしたりできることもうれしいと思います。こうしたことは、今でしかできないものづくりや資金集めの方法なので、いろいろなアイデアを出してやっていくのがいいかもしれませんね。時期や金額も、第1弾、第2弾、第3弾……などと小分けにしてやっていくといい場合があるので、そういった工夫もされるといいと思います。制作に参加できるというリターンだと、制作の初期しか募集できないと思いますし。目標金額を少なく見積もってそれを上回る金額を集め、“大好評だったので第2弾をやります”というかたちでやっていくのもセオリーですよ。
 
川尻:クラウドファンディングのやり方も、プロデューサーに相談しながら検討したいと思います。
作画スタッフが集まったのはうれしいのですが、これから現場を回せる人を探さなければいけないと考えています。たくさんの人たちに少しずつ手を借りることによって、低予算でつくることができているとも言えるのですが。特に、一人一人にアニメーションの作業方法を教えることに時間がかかっています。そこをもう少し効率よくしたいと思っています。
 
和田:難しさもあると思いますが、全体的に、聞いていてわくわくするようなつくり方をされていると思います。アニメの実現に向けて、このまま頑張ってください。
 
川尻:自分でもこの状態で完成まで持っていけたら、何か新しいものが生まれる予感があります。今後、体制づくりもしっかり行っていきながら、作業を進めていきたいと思います。

—今後は、3月の成果発表の内容を検討しながら、制作を進めていきます。