令和5年度のクリエイター育成支援事業の創作支援プログラムでは、初の試みとして中間面談を合同で実施。ほかのクリエイターの進捗を聞くことで自身の創作の刺激を得るとともに、二人の担当アドバイザー以外からの指南を得る機会にもなりました。面談当日は二つの部屋に分かれて同時進行で面談が行われ、終了後には懇親会が開かれ部屋同士の交流の場ももたれました。本レポートでは発表グループ②の様子をレポートします。

合同中間面談 発表グループ②
日時:2023年11月24日(金)
時間:13:00~17:30
会場:神田スクエア「ConferenceC」
アドバイザー:石橋素(エンジニア/アーティスト/ライゾマティクス)/西川美穂子(東京都現代美術館学芸員)/森まさあき(アニメーション作家/東京造形大学名誉教授)/森田菜絵(企画・プロデューサー/米光一成(ゲーム作家)

※山形一生さん+ひらたとらじさんの面談は2023年11月28日(火)に別途実施
アドバイザー:石橋素(エンジニア/アーティスト/ライゾマティクス)/西川美穂子(東京都現代美術館学芸員)/山川冬樹(美術家/ホーメイ歌手/秋田公立美術大学准教授)/米光一成(ゲーム作家)

竹森達也『Laser Ropes』

真っすぐなレーザー光を、ゴム紐のように柔らかな曲線に演出することを目指す竹森達也さん。in the blue shirtの名で活動する音楽家の有村崚さんに楽曲を依頼し、音楽に反応したレーザー光の動きを実験。ライブ感のあるパフォーマンス装置を目指しています。今回は面談会場でプロトタイプの装置を披露。霧の中で音と同期するレーザー光をなんとか見せることができました。グラフィックデザイナーの岡崎智弘さんの個展に影響を受け、日々のアイデアの積み重ねが重要だと気づき、今後は日常の中で生まれたアイデアをSNSなどで発表しながら「どんどんプロトタイプをつくっていきたい」と話します。

「プロトタイプの機械音がかわいい。音楽ときれいにシンクロするよりも直進した光が曲がることに感動したい。そこまでもう一歩かな」と米光さん。「隠れた部分をどのように脳で補完できるか、隠す場所を変化させていくというのもあるかもしれない」と石橋さんが新たな視点を投げかけました。最後に森さんは、米光さんがコメントした機械音の魅力について「人はアナログ的なものに魅力を感じることもある」と加えました。

>初回面談レポート#5:竹森達也

戸石あき(lemna)『表現力豊かな《工房》の模型』

初回面談で工房の3Dデータを「アーカイブする」という方向性を決めた戸石あきさんは、パイロット版のアプリを披露しました。アプリでは工房で本棚を制作する人の様子が流れ、その工房の中を自由に見ることができます。現在はモーションキャプチャの人物と、実際に制作する人物が二人いる状況で技術的な課題もありますが、最終的にオンライン展覧会として公開していく予定です。12月には、東京藝術大学と多摩美術大学のガラス工房で撮影をし、両工房も3Dアーカイブとして実装していきます。

アドバイザーの米光さんからは「アーカイブと表現は対局にあると思うが、編集したいですか」と質問がありました。戸石さんは「編集したいけれど、初回面談でアーカイブをやりたいことに気づいた。なるべく自分の視点はいれたくない」と答えます。すると米光さんは「構想が大変壮大」と評しました。「表現だったら多少荒くていいけれどアーカイブだと細部まで妥協できない。意図や偶然出てくる面白さを削ぎ落としていくのは大変な作業になるだろうから今の段階でそのあたりをどのように割り切るか、または諦めるかを考えてもいいかもしれない。でもぜひライフワークとして頑張ってください」と激励しました。

>初回面談レポート#6:戸石あき(lemna)

堂園翔矢『ORBITAL ART – 芸術と科学の領域横断コラボレーションによる軌道芸術作品の制作』

堂園翔矢さんは初回面談を経て、作品の主題を軌道データの「可視化」から「可聴化」に変更しました。また対象データを見直し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の研究者、尾崎直哉さんが企画提案する「Astromine(アストロマイン)」というプロジェクトの軌道データを使ってプロトタイプを制作。これは小惑星を効率的に探索することができるプロジェクトで「S-Booster 2023」という宇宙をテーマにしたビジネスアイデアコンテストで最優秀賞を獲得しました。今後はAstromineで企画された12機の探査機を音源に「可聴化」を試みる予定です。2024年3月上旬にマルチチャンネルのサウンドシステムを用いた映像音響インスタレーションの展示を検討しています。

前回の面談のときにデータビジュアライゼーションは既視感との闘いかもしれない、と指摘した担当アドバイザーの森田さんは、「可聴化」にシフトした今回の提案に面白さを感じたとのことで、「体験した人に何を持ち帰ってもらいたいかを考えてもらうと、より深みが出るだろう」とアドバイスしました。プロトタイプの映像を見て西川さんは「これが(自然の摂理による美を体現する)惑星の軌道ではなく、人工衛星の軌道というのが興味深い。人工衛星の動きから美を感知するには、さらに地球との関係性がより見えてくると良いと思う」と、地球との距離や関係を体感できる要素を加えることを提案しました。

>初回面談レポート#07:堂園翔矢

仲田梨緒+宇枝礼央『oToMR – Tactus』

ARゴーグルとグローブを使って、音を可視化し、触れてコントロールできる作品を制作する仲田梨緒さんと宇枝礼央さん。初回面談時から使用するスピーカーを5台から8台に変更。またストーリーを作成して、デモ版をつくっています。現在の課題は技術面のほかに、始まりと終わりの効果的な演出や、エフェクトをどのように表現するかということ。1月の最終面談までに技術面をクリアにしながら、ストーリーやエフェクトのブラッシュアップ、またユーザーテストを行う予定です。最後に、2024年の秋に向けた個展のイメージも発表しました。

「プレゼンテーションの映像がよくできている」と担当アドバイザーの森さんと西川さん。森さんは「テスト段階ではあるが、黒いタピオカのような表現は面白い。当初のイメージは光の玉だったと思うが、あまりとらわれずにアイデアを出してみると可能性が広がる」と感想を述べました。石橋さんからグローブはどのような想定か質問があり「効果音に応じた振動を想定しているが、現在プロトタイプを制作中」と宇枝さんが回答。石橋さんは「音の種類によって感触が変わっていくのは面白いと思うので、完成が楽しみ」と話しました。

>初回面談レポート#8:仲田梨緒+宇枝礼央

長野櫻子(anno lab)『それぞれの日々』

コロナ禍の日々について、福岡市に住む6組の人たちにインタビューし、その内容をもとにアニメーションを制作する長野櫻子(anno lab)さん。中間面談ではストーリーの構成と絵コンテが紹介されました。全体の構成としては、主人公が街を歩くと6組の人たちと順にすれ違い「それぞれの日々」が回想されます。エピソードは、6組それぞれのネガティブな話とポジティブな話に分けて描いていきます。長尺を予定しているため、見る人があきないよう劇伴を重視。作曲家の森田了さんに依頼し、組ごとに別のモチーフを当てて音楽をつくってもらいます。次回はVコンテやサンプルの音楽を発表する予定です。

どのアドバイザーも「ぜひ早く完成を見たい」とコメント。「ナレーションやセリフは入るか」という西川さんの質問に「動きや表情のみで伝えていく」と長野さん。追加インタビューの状況については、6組へのインタビューは1年以上前に終えているものの、人物を描くにあたり再度取材を依頼中とのこと。コロナ禍の日々を「音声や動画といった記録ではなく、アニメーション作品として仕草や表情を表現できたら10年後に見返しても貴重な作品になると思う」と森田さんは期待を込めました。時が経つと風化していくため、長野さんは「当時を思い出しながら制作したい」と意気込みます。

>初回面談レポート#9:長野櫻子(anno lab)

布施琳太郎『海の美術館』

アナログゲームを通し美術館建築の理想を考える『海の美術館』。10月にニューヨークのギャラリーで展示機会があり、建築家や学生、アーティストに試作したゲームをプレイしてもらいました。このゲームは一人が建築家、もう一人がパトロン、哲学者、大統領、テロリスト、芸術家、「あなた」の中から選んで二人で対戦し、海を覆う巨大な美術館の計画を進める建築家を止めるための対話を目的としたゲームです。初回面談でアドバイスのあった「ジャーナリングRPG」の方法で手紙をゲームに取り入れた布施琳太郎さん。「手紙によって参加者の思考が残るのが魅力的」であり「ゲームを通して建築とは何か、美術館とは何かといった対話ができた」と実施した所感を話します。展示方法については模索中です。

アドバイザーの森さんから「このプロジェクトは観念的なところがすごく面白い。ゲームの駒にアクリルキューブを使っているが、駒をもう少しつくり込んだほうがいいかも」とアドバイスがありました。石橋さんは「役割を演じるゲームは、現実とはかけ離れた世界で、自分が何をすればよいかが与えられている状況がある。それに対して先日の実践では、演じる役割に対してリアルな立場の人が参加したため、見ている人もリアリティがあって面白いだろう。ただ、もう少しゲーム自体を楽しめる仕掛けがあってもいいのでは」と提案しました。

>初回面談レポート#14:布施琳太郎

原田裕規『Waiting for』

最初に「ATAMI ART GRANT 2023」で展示中の作品『Home Port』を紹介した原田裕規さん。それは2023年8月のマウイ島の山火事で甚大な被害にあったラハイナの風景を題材にしたCGによる映像作品です。制作にはラハイナ出身のクリスチャン・ラッセン(1956–)や、日本人作家の松澤宥(1922–2006)や東山魁夷(1908–1999)を参照。このレンダリングポルノのシリーズは美術史におけるコンセプチュアリズムと絵画をつなげることができるのではないか、と考えています。次の展開では実際に絵の具を使ってフィジカル的に実験していく予定です。

「初回面談からは手を動かしたことで絵画に関心がフォーカスされた印象。今回、参照点としてあがってきた3名のアーティストは奇妙な組み合わせに見えるが、原田さん自身の中で、どのような結びつきで出てきたのかが気になるところ」と担当アドバイザーの西川さん。原田さんは「言葉を使った作品をつくるコンセプチュアルアーティストが現代で生きていたとするとCGに関心を寄せるのではないかと思う。絵づくりの部分で実感が持てた」と答えました。最初の企画内容と大きく変化したような発表内容にアドバイザーらは混乱した様子もありましたが「前回の面談時点では、CGで起きていることを版画などに物質化することを考えていたのですが、今は絵づくりや色彩の表現など、よりCG的な絵画と絵画的なCGを探っていきたい。襖絵やキャンバスなど、絵画への展開を検討している」という原田さんの説明に期待を寄せました。

>初回面談レポート#13:原田裕規

山形一生+ひらたとらじ『Farewells – Prologue』

写真:杉山(ゆかい)

ゲームの中の主人公がゲームをする、入れ子状のゲーム作品を制作する山形一生さんとひらたとらじさん。冒頭部分のプロトタイプが完成しました。FPS(ファーストパーソン・シューティングゲーム)でスタートしますが、やがて主人公のいる世界に切り変わることで、プレイヤーはゲーム内ゲームをプレイしていたことに気づく仕組みです。今後、主人公と家族とのやりとりや、FPS以外のゲーム内ゲームを実装していきます。

写真:杉山(ゆかい)

「今、現実の世界でもゲームのようなことが起きていて、例えば兵士が戦場には行かず遠隔でドローンを操作して戦う。現実に対する批評性も持ち合わせているように感じた」と山川さんはコメント。二人の発表が実装した冒頭部分の紹介のみだったため「うまくプレゼンしようと思わなくてよいので、制作中のアイデアが見える資料があるとアドバイスしやすい。アイデアをリストにするだけでも全体の感触がわかると思う」と石橋さん。米光さんも「面談のタイミングで一度計画をまとめるなど、人にどう伝えるかを意識するとよい」とアドバイス。西川さんは「複数の異なるジャンル、時代のゲームが含まれていることが重要だと思うので、ぜひ別のゲーム内ゲームの制作もスタートしてほしい」と話しました。

>初回面談レポート#16:山形一生+ひらたとらじ

懇親会

中間面談のあとは2部屋に分かれたチームが集まり懇親会も行われました。アドバイザーとクリエイターが一堂に会するのは初めての機会。面談の緊張もほぐれ、制作の裏話やアドバイザーらの活動についてなど面談では聞けない話も飛び交いました。

仲田梨緒さんと宇枝礼央さんのようにプロトタイプを披露するクリエイターも。ゴーグルをかけて作品を体験するのは担当アドバイザーの森さんです。中間面談でのプレゼンテーションで紹介されたイメージ映像を、完成に近い状態で体験してもらう貴重な機会となりました。

当日の様子

ダイジェスト映像はこちらからご覧ください。